成長ホルモン治療読む時間 約7分
成長ホルモンが足りている子に打っても伸びる?病気でない低身長と治療
公開日:2026年10月27日 更新日:2026年10月27日
成長ホルモンが足りている子(特発性低身長)でも、注射で伸びる速さが上がり、大人の身長が平均で数cm上乗せされた研究があります。足りない子ほどではありませんが、伸びる子は多くいます。まず病気が隠れていないかを確かめ、そのうえで治療を考えます。
「成長ホルモンが足りている」とは、どういう状態?
成長ホルモンは脳の下垂体から出るホルモンで、骨の端にある成長板(骨端線)に働いて骨を伸ばします。足りない病気(成長ホルモン分泌不全性低身長症)かどうかは、薬で分泌を促して血液中の量を測る検査(分泌刺激試験)で調べます。原則として2種類以上の検査で確かめます。
2008年に成長ホルモン研究学会などの専門家が合同でまとめた見解は、特発性低身長を次のように定義しています。身長が−2SD(同じ性別・年齢の100人のうち前から2〜3人ほどの低さ)を下回り、分泌刺激試験を含めて詳しく調べても病気が見つからない状態です。家族も背が低めの家族性低身長や、思春期がゆっくり来るタイプも、ここに含まれます。
つまり「成長ホルモンが足りている子」の多くは、病気ではなく、体質として背が低めの子です。特発性低身長そのものは「原因が見つからない低身長(特発性低身長)とは?」のコラムにまとめています。
足りている子に打っても、伸びるのはなぜ?
成長ホルモンの注射は、もともとは足りないホルモンを補う治療として始まりました。米国の小児内分泌の学会の指針の解説(2017年)は、その後、足りている子にも量を上乗せして伸びを促す使い方へ広がってきた経緯を説明しています。
成長板が開いている間は、成長ホルモンが足りている子でも、注射で1年あたりの伸びが速くなることがあります。国際的な治療データベース(KIGS)の2022年の報告では、思春期前の特発性低身長の子の1年目のSDスコアの上がり方は、中央値で0.55でした。
ただし、伸びる速さが一時的に上がっても、そのまま大人の身長の差になるとは限りません。同じ解説は、治療中の伸びの速さや予測身長の変化は、大人の身長を言い当てる確かな物差しではないとしています。
研究では、どのくらい伸びた?足りない子と比べると?
くじで治療を分けた試験(無作為化比較試験)3件をまとめたBMJ誌の報告(2011年)があります。治療を受けた子の大人の身長は、受けなかった子より平均で0.65SD高くなっていました。著者らは、効果は承認されている病気より平均して小さく、一人ひとりの反応の差がとても大きいとしています。
2008年の合同見解は、平均4〜7年の治療で上乗せされる大人の身長を平均3.5〜7.5cmとしています。研究ごとの数字や伸びやすい条件は「成長ホルモン治療で身長は何cm伸びる?」のコラムで説明しています。
欧米の2つの観察研究をまとめた2025年の報告もあります。大人に近い身長まで追えた子のSDスコアは、特発性低身長で平均−1.21、成長ホルモン分泌不全症で平均−0.90でした。足りない子ほどではないものの、足りている子でも身長が伸びた例が多くあります。
コクランの複数の研究をまとめた報告(2007年)では、治療を受けた子も、平均的な身長の子と比べると低めのままでした。足りている子への治療は、平均との差を一部縮めることをめざすものです。
国内では、どんな位置づけ?
国内で成長ホルモン製剤が承認されているのは、成長ホルモン分泌不全性低身長症、ターナー症候群、SGA性低身長症など、骨端線が閉じていない特定の病気です。原因となる病気が見つからない低身長は含まれず、使う場合は承認された使い方の外にある適応外使用になります。ノビケアの治療も、この適応外使用の自由診療です。
海外では扱いが違います。合同見解によると、米国など8か国では、身長が−2.25SDを下回る特発性低身長の子への治療が承認されています。国によって判断が分かれていて、効果と負担の釣り合いはいまも議論されています。
海外の指針は、足りている子の治療をどう考えている?
米国の小児内分泌の学会の2016年の指針について、同じ解説は、特発性低身長への3つの勧めを挙げています。
解説は、身長と心の面の適応の結びつきは弱く、身長以外の物差しで治療の価値を考える必要があるとも述べています。合同見解も、心理的な相談(カウンセリング)を、治療の代わりや治療と合わせて考える価値があるとしています。
- 治療するかどうかは、子どもの体と心の負担、治療の利点とリスクを一人ひとり評価し、家族と医師が一緒に決める
- 治療を始めて12か月後に、身長への効果と心の面への影響を見直す
- 量は控えめにする
足りている子に使うと、体への影響は?
合同見解は、特発性低身長への治療の安全性は、ほかの病気への治療と同じような傾向だとしています。同じ解説でも、治療中の副作用は治療を受けた子の3%未満と少ないとされています。
一方で解説は、病気のない子への治療では効果の大きさが読みにくい分、ごく小さな長期のリスクも慎重に考えるべきだとしています。治療が終わったあとの長い年月の影響には、まだ分かっていない部分があります。
25の研究をまとめた報告(2024年)では、特発性低身長の子で、治療によって思春期が平均で約0.46年早まる傾向が見られました。主な副作用は、注射したところの痛みや腫れ、頭痛、むくみなどです。頭痛が続く、吐く、見えにくい、足を引きずる、股やひざが痛いといったときは、早めに医療機関を受診してください。
治療を考える前に、何を確かめる?
最初に確かめたいのは、背が低い理由が本当に体質なのか、治療が必要な病気が隠れていないかです。成長曲線から下に外れていく、1年の伸びが急に小さくなった、疲れやすい・寒がりなどの症状がある場合は、とくに詳しく調べる意味があります。
ノビケアでは、医師が成長の記録をもとにお話を伺い、必要に応じてご自宅でできる郵送の血液・尿検査を行います。手のレントゲンで骨年齢を見ておくと見通しを立てやすいため、近くの医療機関で撮ることをお勧めしていますが、必須ではありません。
身長が−2SD以下のお子さんのご相談もお受けしています。診察や検査で病気が疑われるときは、医師が専門の小児科へご紹介します。病気の有無を確かめてから、治療をするかどうかを考えるのが順番です。
治療をするか、何を比べて決める?
足りている子への治療は、毎日の注射を年単位で続けることになります。期待している伸びの大きさと、生活や体への負担を、家族で並べて考えてみましょう。
「どのくらい伸ばしたいのか」「それは何のためか」を言葉にしておくと、1年後の見直しのときの物差しになります。治療をせずに記録を続けることも、考えたうえでの選択肢です。比べ方は「成長ホルモン治療を受けるか迷ったら」のコラムでも説明しています。
出典 [4]
足りている子の治療についてよくある質問
Q. 分泌刺激試験を受けていなくても、治療を考えられますか?
A. 足りない病気かどうかを確かめるには、分泌刺激試験が必要です。ノビケアの医師は、成長の記録や郵送の検査の結果から、専門の医療機関で詳しく調べたほうがよいかをお伝えします。
Q. 両親も背が低い家族性低身長でも、治療で伸びますか?
A. 研究では、両親の身長から見込まれる位置より子どもの身長が大きく下にあるほど、反応がよい傾向がありました。家族と同じくらいの位置にいる場合の見込みは、記録を見ながら医師がお伝えします。
Q. 思春期に入っていても、治療を考えられますか?
A. 骨端線が開いていれば考えられます。ただし日本小児内分泌学会の見解では、骨年齢で男子15歳・女子14歳以上では、ほとんど効果がみられません。二次性徴が進んで1年の伸びが2cm以下になった場合も同じです。迷っているなら早めにご相談ください。
まとめ
成長ホルモンが足りている子でも、治療で伸びる速さが上がり、大人の身長が平均で数cm上乗せされた研究があります。まず病気が隠れていないかを確かめ、伸ばしたい幅と毎日の注射の負担を比べて決めます。お子さんに治療を考える意味がありそうかは、ノビケアの医師による無料相談で、成長の記録を見ながらご相談いただけます(予約は公式LINEから)。
出典 [13]
ノビケアの成長ホルモン治療について(自由診療)
ノビケアの成長ホルモン治療は自由診療で、健康保険や医療費助成は使えません。原因となる病気が見つからない低身長への使用は、国内で承認された効能・効果に含まれていない適応外使用です。重い副作用が起きた場合でも、国の医薬品副作用被害救済制度は原則として利用できません。
費用(税込)は、医師による無料相談が0円、医師が必要と判断した場合の郵送検査(指先の血液と尿)が20,000円(送料込み)です。お薬は1本あたり、治療を始める月が40,000円、2か月目以降が60,000円、6か月分一括プランでは50,000円です(注射器・注射針と冷蔵便の送料を含みます)。1か月に使う本数は体重によって変わり、2〜5本が目安です。
注射はご自宅で毎日1回行い、治療は年単位になることが多く、続けるかどうかを定期的に判断します。主な副作用は、注射したところの痛み・赤み・腫れ、関節の痛み、むくみ、頭痛などで、まれに頭の中の圧が高くなる、股関節の骨がずれる、側弯が進む、血糖値が上がる、甲状腺の働きが変わる、といったことがあります。詳しくは「成長ホルモン治療について」のページをご覧ください。ご質問はお問い合わせページから受け付けています。
お子さまの身長の伸び方が気になる場合は、医師による無料相談で、これまでの記録を見ながらご相談いただけます。予約は公式LINEからお受けしています。
公式LINEで無料相談を予約するこの記事は、ノビケアの医師が内容を確認しています(編集方針)。
参考にした資料
- 日本小児内分泌学会「成長ホルモンとは」
- 日本小児内分泌学会「低身長」
- Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism「Consensus statement on the diagnosis and treatment of children with idiopathic short stature」(成長ホルモン研究学会・米国小児内分泌学会・欧州小児内分泌学会の合同会議、Cohen P ほか、2008年、PubMed)
- Current Opinion in Pediatrics「Growth Hormone Treatment for Growth Hormone Deficiency and Idiopathic Short Stature: New Guidelines Shaped by the Presence and Absence of Evidence」(米国小児内分泌学会2016年指針の作成者による解説、Grimberg A・Allen DB、2017年、PubMed)
- Journal of Clinical Endocrinology & Metabolism「Safety and Efficacy of Pediatric Growth Hormone Therapy: Results From the Full KIGS Cohort」(Maghnie M ほか、2022年、成長ホルモン治療を受けた子ども83,803人の国際データベース、PubMed)
- BMJ「Impact of growth hormone therapy on adult height of children with idiopathic short stature: systematic review」(Deodati A、Cianfarani S、2011年、無作為化比較試験3件・115人など、PubMed)
- Journal of the Endocrine Society「Comparative Outcomes of GH Treatment in Pediatric Idiopathic Short Stature and GH Deficiency」(Phillip M ほか、2025年、欧米の2つの観察研究の特発性低身長2,684人・成長ホルモン分泌不全症15,721人、PubMed)
- Cochrane Database of Systematic Reviews「Recombinant growth hormone for idiopathic short stature in children and adolescents」(Bryant J ほか、2007年、無作為化比較試験10件、PubMed)
- ノビケア「成長ホルモン治療について」(費用・副作用・適応外使用)
- Hormone Research in Paediatrics「Effect of Growth Hormone Therapy on Pubertal Timing: Systematic Review and Meta-Analysis」(Olwi D ほか、2024年、25研究・子ども1,433人の系統的レビュー、PubMed)
- PMDA「患者向医薬品ガイド ソマトロピンBS皮下注「サンド」シュアパル」
- Hormone Research「Age at growth hormone therapy start and first-year responsiveness to growth hormone are major determinants of height outcome in idiopathic short stature」(Ranke MB ほか、2007年、国際データベースKIGSの特発性低身長の子ども、PubMed)
- ノビケア「お問い合わせ」